Blog212. 星座-過去・現在・未来をつなぐ物語-

03.25

(第19回卒業証書・学位記授与式/式辞抜粋)
▼時の流れから自由になって、長い時間、瞬く夜空の星を見上げたことがあるでしょう。子どものとき、星座盤を両手に瞬く星をつなぎ、夜空にたくさんの線を描いた記憶もあるでしょうか。はるか古代から星をつないで何かに見立てる人間の《ひらめき》の能力は、誰にでも備わっている《ナラティヴ・コンピテンシー=物語能力》の原型です。その物語能力は星座とともに神話を生み、それに基づいた星占いにも結びつきました。現代に至っても、私たちは、朝のテレビの星占いで自分の星座の運勢を知るとやはり気になります。夜空の星を見上げ、星と星をつなぐナラティヴな感覚が自分の運命の物語に働きかけてくるのです。

▼物語論の権威である野口裕二先生は、物語は星座のようなものであると言い、自分が今まで経験してきた多くの出来事から主なものを選んで、それをつなぎ合わせると、星座のような図柄ができあがる。しかし、ある時、今までとるにたらないと思っていた出来事がとても重要に思えてきて、その出来事を加えると星座の形も変わってくる。物語というのは、無数にある点のなかから何かを選び、どうつなぐかによって変わる。過去、現在、未来をつなぐ物語はさまざまな形をとりうるのですと言われています。今、皆さんは富山福祉短大で過ごした日々の多くの出来事から、どの出来事の輝きを星として感じ、自分の星座として心に描き出すのでしょうか。今、皆さんが星座のようにつなぎ思い描く物語は、どの星、どの出来事を選ぶかによって形を変え、物語の意味を変えていきます。大学生活の中で新たに学んだ知識や技術によって、以前はとるに足らないことに思えていたことや、感じることさえもできなかったことが、新たな意味を持ち、皆さんの心で輝いていると信じます。本学の教育目標である「つくり、つくりかえ、つくる」。それは、これからの人生において、みなさんが新たに描き出す星座の形をかえ、物語の意味をつくりかえ、そして、生きてきた過去だけでなく、生きていく未来をもつくりかえていくことを意味します。そして、皆さんが学んできた福祉・教育・看護のこの道は、周りの人々を否応なく巻き込みながら歩んでいく道です。だから、とるにたらないと思えることの中でこそ、学んできた専門性を発揮し、一つひとつの実践の在りようを大切にしなければなりません。どうか、卒業というこの人生の節目に、これからの人生の基になる自分の星座の在りようを仰いでみてください。

▼私は、明日、ある高齢者のアートサロンで、《ひらめき》をつなぐ能力を活性化させる臨床美術のセッションを行うことにしています。明日、目を覚ましたときにやりたいこと、やらなければいけないことがあることを私は幸せに感じます。認知症予防や臨床美術の現場も、関心を抱かない人にとっては、とるに足らない出来事の連続の場なのです。その地域サロンには90歳ぐらいの方が数名いらっしゃいます。一時の集中力で力強い絵を描かれても、描き終えたときに自分がこの絵を描いたことを覚えていらっしゃらないことがあります。それでも、楽しかったという思いはたっぷり残っていて、毎回、楽しみにして参加してくださいます。1年前10名ほどで始まったサロンですが毎月回を重ね、明日は20名の方が参加されます。

▼私にとっては、このような一回一回の出来事の意味の連なりが私が心に抱く星座・物語であり、今、ここを、そしてこれからを生きていく意味なのだと思っています。そして、こうした物語をつくり、分かち合う能力こそ、創造性と共感性であり、私たち人間への最大のお贈りものなのだと思っています。どうか、卒業生の皆さんは、それぞれの専門分野において、その専門性を発揮することによって些細なことに輝きをもたらすような仕事や学びを続けてください。そのように考えると、教育目標「つくり、つくりかえ、つくる」は、これからの皆さんにこそ、必要な言葉であると思うのです。この先々、皆さんが「とるにたらない日常」に感じられてしまうという人生の危機から抜け出そうとするとき、この母校の合言葉が駆けつけ、新たな力になると信じています。皆さんに入学前からお話してきた教育目標「つくり、つくりかえ、つくる」が、これからも皆さんの心の星座のなかで輝くように、改めてその意味するところをお伝えして、式辞と致します。

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